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カッタッパの名声

字数の関係で字幕に出なかったバーフバリのトリビア第3弾。

 

武器商人アスラム・カーンがカッタッパの忠臣ぶりに感銘を受けて言った名セリフ、「忠誠を絵に描いたら あなたのような姿形になる」(前編円盤約30分のところ)。

 

実は原語にはもう一つ意味が読み取れ、それは「百聞は一見に如かず」です。というのも、直訳すると「信じるにも形があるのだと、私はあなたを見て初めて理解した」となるからです。「形」とは具体的な像、物理的イメージ(絵など)を意味しています。

 

それからすると、カッタッパの忠臣ぶりはマヒシュマティを越えた諸外国、津々浦々まで知れ渡っており、アスラム・カーンは本人に会って初めてその噂が本当だとわかった、と読むことができると思います。

 

ただ実際は、「百聞は一見に如かず」に相当するテルグ語古来の慣用句はないようです(管見の限り、ですが)。現代テルグ語でたまに出てくるのは英語(Seeing is believing)の翻訳としてです。映画の英語字幕版でもこの個所の字幕は日本語字幕と同じ文面になっており、インド人が「百聞は一見に如かず」のような言い回しをしないのだと、そこからも想像されます。しかし、ラージャマウリ親子がそこまで言語的な時代考証をやったとは思えず、テルグ人インテリがみな英語教育を受けて育つことを考えると、個人的には「百聞は一見に如かず」の意味もあったんじゃないかなと思います。

 

Rise of Sivagami (2017年)を読むと、カッタッパの祖先が武器(剣)の製造に関するもの凄い秘密を持っていたこと、そのためにマヒシュマティが強大になったこと、しかし何か大きな裏切りがあって、一族が奴隷になったことが間接的に描かれています。アスラム・カーンがカッタッパを見て本当だと信じるにいたった事柄は、単に彼が並外れた忠臣だという事だけではなかったのかもしれません。カッタッパが武器工場長であること、彼の剣がアスラム・カーンの「大帝」を破ったことの裏には、もう一つの物語があるのでしょう。